リアル




しかし、薫の予感は皮肉にも的中したのだった。


辿り着いた先には、妹である美咲の亡骸が無惨に転がされていた。


仰向けで横たわる美咲に近寄るまでもなく、絶命していることは明らかだった。


だが、身体は勝手に駆け寄った。


案の定、美咲は息をしていなかった。


薫は腹の底から何かが沸き上がるのを感じた。


悲しみ、憎しみ、悔しさ。


様々な感情がまぜこぜになり、とても言葉で表せるものではなった。


美咲の頬に触れても、ただ冷たいだけで、まるでそれは人形のようだった。


涙も叫び声すら出ない。


衝撃だとか、そんなものではない。


「あんたが悪いんだよ?」


小田のその声は事情聴取で聞いたものとは違っていた。


あの時は何もかもから追い詰められたような声をしていたのに、今は全てから解き放たれたような声だ。


「あんたが、理由があろうと、殺人は殺人でしかない、なんて偉そうに説教垂れるから」


小田はそう言った。



.
< 148 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop