リアル




「実家の病院に、口腔外科を設立したいんです」


美緒は夢を含んだ瞳で言った。


薫はそれに対し、笑顔で頷く。


目の前には前菜として注文した蛸のカルパッチョが置かれている。


手をつけているのは隆だけで、薫は真剣に美緒の話を聞き、美緒は真剣に薫に話をしていた。


「素晴らしい夢をお持ちなのね」


薫の言葉に美緒はそんなことないです、と謙遜をした。


次に、パスタとピザが運ばれてきた。


これらの料理全てを合計した金額は、薫の一週間分の食費に匹敵する。


後で生野に必要経費として請求しなくては。


薫は料理を取り分けながらそう考えた。


「ところで、美緒さんの趣味は?」


食後のコーヒーを啜りながら薫は尋ねた。


美緒も上品な仕草でコーヒーを啜っている。



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