リアル




「被害者三人の衣服についた毛布の繊維ですが、全て同じものと見て間違いないそうです」


若月は意気揚々と報告した。


生野はそれを聞きながら、そうか、とだけ言い、そのことを薫にメールで報せた。


この事実から分かる事柄は、犯人は同一人物だということ。


それだけだ。


そして、そんなことはとうに見当が付いていることで目新しい事実にはならない。


「それで、その毛布の繊維なんですが、これといったものではなく、入手は誰にでも可能だそうです」


となると、そこから導き出せることはない。


しかし、生野はそこで何かを思い付いた。


「……被害者三人の殺害場所」


生野の独り言を質問だと思った若月は慌てて手帳を捲った。


そこには今回の事件に関する事柄がずらりと書き記されている。


「えと、一人目は不明、二人目は自宅アパート、三人目も不明、です」


生野は耳に入ってきた若月の言葉を頭で整理した。


そして、今度は本当に質問をした。


「毛布はどのようにして使われた可能性が一番高い?」


「被害者の遺体を遺棄現場まで運ぶ時です」


若月の返しに、生野は煙草を灰皿に押し付けた。


一瞬にして立ち上っていた煙が消える。


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