リアル



「確かに今の方法なら、乾いた布で口を塞ぐより短い時間で済むわね」


薫の言葉に生野も濡れた顔を拭きながら頷いた。


「抵抗される時間も短いし、何より口を塞いだ痕も残らない」


隆はだろ、と得意気な表情を浮かべた。


「でも、肝心なところは解決しないわ」


確かに隆の着眼点はいい。


でもそれではもう一つの疑問は解けない。


「今、生野の手を抑えたでしょ?」


そうだ。


それでは口を塞いだ痕は残らずとも、抵抗させないのは無理だ。


どうしても、抑え込んだ痕は残ってしまう。


「でも、一つでも謎が解ければ一歩前進、だろ?」


隆の言葉に思わず笑みが漏れた。


その通りだ。


行き詰まったつもりでいた。


でも、そうではない。


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