リアル




「さすが、歯学部の学生さんだな」


生野は少しの嫌味を込めながら言った。


だが、初めて聞く事実に感心している気持ちもあるのは確かだ。


「そんなことないです。一般的なお話ですよ、今は」


目には目を、歯には歯を。


悪意には悪意を、か。


目の前の青年はなかなかいい性格をしているようだ。


「君も将来は独立するのか?」


「君も、というのは決め付けですね。歯科医師希望の者、全員が全員開業を目指しているわけではありません。
中には一生勤務医でいいという者もいるし、それこそ口腔外科で働く者もいます」


生野は英治の返答に、へえ、と頷いた。


生野からしてみれば、歯学部の学生は皆、開業してセレブの仲間入りというイメージがあったのだ。



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