リアル
「おはよう」
薫が川原に挨拶すると、川原は目も合わせずに小さな声で「おはようございます」と返してきた。
人見知りとかいう以前の問題だ。
薫は川原と挨拶を交わすたびにそう思っていた。
アルバイトの子には、挨拶すら満足に出来ない者が沢山いる。
川原のように小さな声で返す者、軽く頭を下げるだけの者、ちーす、などどいう砕け過ぎた言葉を使う者。
自分が若い時は周りにそんな者はいなかった。
これが時代というものなのだろうか。
薫は彼らと挨拶をすると、自分が更に年寄りになった気がした。
休憩室で支給されたエプロンを着け、タイムカードを押し、売り場へと出る。
夕方五時。
店が一番混雑する時間だ。
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