リアル






何処かで聞いたことがある。


そんな生温い感覚などではない。


隆は手足が震えるのを感じた。


身体中に電撃が走っているかのようだ。


「じゃ、今日は帰るよ」


裕児はそれだけ言い、席を立った。


その瞬間、ある言葉が頭を過った。




――じゃあね、バイバイ。




忘れたくとも忘れられないあの日の記憶。


決して忘れてはいけない記憶。


まさか、あの男が……。


立ち上がらなくては。



追いかけなくては。



でも、足はがくがくと震えている。


疲れからなどではない。



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