リアル





仕事が終わるのは深夜十二時。


余った惣菜を幾つか貰い、コンビニで缶ビールを買う。


本当なら勤め先のスーパーで買ったほうがコンビニで買うより安上がりなのだが、薫はいつもそうはしなかった。


勤め先の人間に趣味や嗜好がばれるのはあまり好かない。


そこに特に理由はないのだが、強いて挙げるなら、やはり親しくはなりたくない、ということだろうか。


深く関わりたくない理由はきちんとある。


最近の若者のように面倒臭いとか、そういったものではない。


失う辛さを味わいたくない。


何かに巻き込んでしまうのが嫌だ。


そういった理由だ。


根掘り葉掘り訊かれるのが嫌なのとはまた別の理由だ。


根掘り葉掘り訊かれるのが嫌なのは、過去を曝したくない。


刑事であった過去や、それを辞めた理由。


そういった事柄全てを他人には話したくないのだ。



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