リアル
暗い夜道を自転車で帰る。
そんな生活が当たり前になって五年以上が過ぎた。
それまでは警視庁捜査一課の刑事として、日々様々な事件に携わってきた。
その時に相棒として組んでいたのが生野だ。
二つ上の生野は有名大学卒業のうえに、父親が警察幹部というエリートだ。
だが本人は幹部の席を狙うつもりもなければ、現場主義の男で、そんな父親も殉職という形で既に他界している。
生野のような遣る気みなぎるエリートを、他の刑事達は持て余し、薫のような新米刑事、それも女を相棒につけたのだ。
それでも生野は薫を適当にあしらったりせず、きちんと一刑事として扱ってくれていた。
楽しいとは違うが、充実した日々であった。
それと同時に、理不尽な殺人事件にいつも憤りを感じていた。
そしてそれは、ある事件を境に更に増したのだ。
刑事ではない今も、理不尽だろうが、そうでなかろうが、殺人を許せない気持ちは強い。
そして、その気持ちは生涯なくなることはないのだろう。
足が疲れきった頃に、ようやくアパートが見えてきた。
今日はいつもより客足が多かったせいか、疲労感が酷い。
部屋に着いたらまず浴槽に湯を張ろう。
薫はそう考えながら、自転車を停めた。
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