リアル





気付くと、薫の髪が頬に当たっていた。


シャンプーの香りか、甘めの匂いが鼻腔に届いた。


少しのむず痒さが頬と首の辺りに走る。


隆はそれを感じながらも、腕の力を強めた。


腕の中には小柄な薫がいる。


自分も男にしては小柄な方だが、女性という生き物は更に小柄なものだ。


それを思い知るのは初めてだった。


「ちょ……何……」


耳の真横で薫の声がした。


隆はその肩に顔を押し付けた。


唇に鎖骨が当たる。


薫が珍しく胸元の開いた服を着ているせいか、唇には鎖骨の感触だけではなく、肌の感触もあった。


柔らかくて、思っていたより温かい。


だが、冬の寒さのせいで冷たくもある。



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