リアル
薫は夕べの惣菜を温めた他、簡単なものを作り、昼食を摂っていた。
今日はパートが休みなので、昼食を終えたら簡単に掃除と洗濯をし、夕飯の買い物に出掛けるはずだった。
いつも通り、一人きりの休日を迎えるはずだったのだ。
なのに、目の前には、「旨い」と大袈裟な声を上げて炒飯を食べる青年の姿がある。
長い髪を縛った、昨日の男だ。
彼は三十分程前、突然薫の部屋の扉を叩いてきた。
昼食の途中に面倒臭い、と思いながらも戸を開けると、そこには彼がいた。
彼は真瀬隆、と名乗り、その後手にしたビールとスナック菓子を薫の顔の前に出した。
そして、一緒に呑みませんか? と言ってきたのだ。
真っ昼間は酒を呑む時間ではない、と追い払おうとしたのだが、隆は簡単には引き下がってくれなかった。
絶対に何かを企んでいる。
そう思えてならなかったが、最終的には薫が負ける形になったのだ。
隆は部屋に入り込むなり、腹が減った、と言い放ち、薫に炒飯を作らせたのだ。
そしてそれを今、貪るように食しているのだ。
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