リアル




「何のつもり?」


薫は深い溜め息を吐いてから口を開いた。


「純粋にお姉さんと呑みたいと思っただけだ」


隆はティッシュで口許を拭いながら返してきた。


それを鵜呑みにすることは出来ない。


「本当のことを言いなさい」


面倒臭い、というのが薫の正直な気持ちだった。


早く帰って欲しい。


隆が犯人である可能性はまだゼロではないのだ。


隆はそんな薫の気持ちなどお構い無しに、椅子から立ち上がった。


そして、部屋の隅の棚に身体を向けた。


「これ、妹さん?」


薫は隆を制しようと思ったが、一足遅かった。


隆は薫と美咲が笑顔で写る写真を手にしている。


「……そうよ」


隠しても仕方無いし、隠すようなことでもない、と薫は隆を肯定した。


「一緒に住んでねえの?」


隆は写真立てを元の位置に戻しながら言った。


ここはどう答えるべきか。


薫は一瞬だけ悩んだが、本当のことを口にした。



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