リアル
常海歯科大附属病院。
隆が教えてくれた名前を薫は頭の中で反芻した。
そんなところに歯科大があるのは長く住んでいるわりに知らなかった。
だから以前勤めていた歯医者の患者数は少なかったのだろうか。
薫はそんなことを考えながら病院の建物を見上げた。
附属、と言われると、病院なのか大学なのか分からなくなってしまうのは自分だけだろうか。
「あれがどうかしたか?」
隆は薫の視線の先を追いながら言った。
「いや、どちらかも見えるなと思って」
薫は建物に視線を向けたまま答えた。
だから何、というわけではない。
何となく気になったのだ。
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