リアル





運ばれてきたオムライスは予想以上に美味しかった。


薫は味の確りしたコンソメスープを飲みながら、満足した胃を撫でた。


こんなにきちんとした食事をしたのはいつ以来だろう。


普段はパート先の残り物か、自分で適当に作ったものしか食べないうえに、薫はあまり料理が得意ではない。


不味いものを作るというわけではないが、特別凝ったものや、美味しいものは作れない。


作るものは可もなく不可もないもの。


昔、まだ生野が恋人だった頃はいつも生野が料理をしてくれた。


彼は料理が得意で、いつも女である薫が立場がないくらいだった。


生野と付き合い始めたのは刑事になってわりと直ぐだ。


だが、その付き合いもそんなに長くは続かなかった。


一見クールに見えるが意外にも熱く仕事に真剣なところ。


まだ若かった薫には生野の熱さが眩しく、憧れだった。


そんな彼からの好意を寄せられていると気付いた時は胸が躍った。


若い娘らしく、可愛く振る舞ったりもした。


そんな自分を思い出し、薫は苦笑いをした。


そんな頃もあったが、今はもう恋愛自体ご無沙汰だし、そもそも恋愛をす気がない。



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