リアル
生野はようやく煙草を口から離し口を開いた。
「で、そのサイトの管理人がそこの学生なんだよ」
正直、そこまで驚くような内容の話ではない。
だが、やはりただの偶然とも思えない。
「そいつに近付いて、話を聞き出して欲しい」
生野はそう言った後に説明を付け加えた。
サイトの内容、被害者二人がそのサイトに登録しているかは不明なこと、単独で捜査をしていること、だ。
「警察じゃないから、聞き出せないわよ」
薫は胸の前で腕を組ながら返した。
ようやく部屋が暖まってきた為、隆が隣でダウンコートをもそもそと脱いでいる。
「そこを何とかさ」
生野は顔の前で手を合わせ、懇願する振りをした。
今はもう恋人でも何でもない男。
ただ、その頼みを断ることをしないのは、自分も調べたいから。
薫はそこまで考えて言い訳染みている、と思った。
何故、了承するのに言い訳が必要なのだ。
これではまるで、まだ未練があるが、それを隠しているみたいではないか。
そう考える時点で既に未練があるのか。
薫は心の中で自嘲した。
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