リアル



「常海歯科大学付属病院」


生野はコートを脱ぎながらその名前を口にした。


その名前に薫はコートを脱ぐ手を止めた。


その病院は、両方の現場から見えたものだ。


これはただの偶然なのだろうか。


「そこに行って欲しい理由は?」


薫は再び手を動かし、コートを脱いだ。


隆は寒がりなのか、まだダウンコートを羽織ったままだ。


そういえば、現場を見ている時も寒さを隠せないといった様子で身を縮めていた。


「被害者二人の携帯電話のブックマークに、あるサイトがあったんだよ」


生野は答えながら携帯電話を取り出した。


ついでに煙草とライターまで取り出している。


生野は携帯電話を開くより先に、煙草を吸う。


この中途半端な間がやけに長く感じられ、薫は少しだけ苛立った。


肝心な話をする一歩前で煙草を吸うのが生野の悪い癖だ。


生野は煙草を一口吸ってから、それをくわえたまま携帯電話を弄り始めた。



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