∮ファースト・ラブ∮

そして……とうとう放課後になってしまった。

本当は……視聴覚室なんか行きたくない。




言われることはわかっているから……。




だけど……。

もしかしたら、あたしが思っているような内容でもないかもしれない。


それでも、やっぱり、どこかでは、ソレだとわかっている。




不思議だよね。

あんなに……あんなに麻生先輩と会いたかったのに……。


今は会いたくないなんて思っているんだもん。







あたしは、人気が少なくなった廊下をひとり。


ゆっくり歩いていた。




このまま…………先輩とは会わずに逃げようかとも考えた。

だけど……逃げることは、あたしの中で許せないことだった。






2階にある吹き抜けの廊下を渡って、隣の棟に向かう。


風があたしの足を掬い上げるように吹いてくる。


まるで、力のなくなったあたしの体をどこかに持って行こうとしてるみたいに感じた。



風に掬い取られて、どこか見知らぬ土地へ行けたらいいのに……。


でも……それだと麻生先輩が見えない。



側にいたいと思っていた麻生先輩を見ることができなくなってしまう。



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