∮ファースト・ラブ∮

やっぱり……麻生先輩から離れたくない。



ドアを引いて隣の棟へと入れば、やはり人気のない廊下があるだけだった。


みんなあたしを置いてどこかに行ってしまったような錯覚になる。



違うよね。

だって、3階の視聴覚室には、きっと麻生先輩があたしが来るのを待っているはずだから……。



隣の棟は、本館とは違って、階段の段差は少し高い。

重い足取りだったから、何度もコケそうになった。


それでも上へと進んでいく。





階段を上りきったところで右折すれば、すぐに真っ直ぐのびた廊下がある。

廊下に沿って教室がたくさん並んでいる。







奥から三番目の教室。




そこに、視聴覚室がある。







とうとう……来てしまった。





口の中は、カラカラだ。


心臓はとても速く鼓動している。

それだけ、緊張しているんだ。




あたしは意を決して視聴覚室の扉に手をかけた。





その時だった――――――――――。








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