∮ファースト・ラブ∮
「久遠……………お前……手鞠ちゃんのこと……」
睦はどうやらぼくの感情を感じ取ったらしい。
手鞠ちゃんに対する想いを…………。
手鞠ちゃんといると、今までの自分がとても惨めになる。
だが、あたたかくもなる。
優しくなる。
こんな気持ちは、はじめてだった。
――香織と居ても、こんな気持ちにはならなかった……。
思わず苦笑がこぼれてしまう。
この感情は、おそらく今のぼくにとって、とても厄介なものになる。
抱いてはならない感情だ。
尚吾に知られれば、どうなるかわかったものじゃない。
また、ぼくの知らないところで傷つけられるんだ。
ぼくは睦から背を向けて歩いた。
「いや…………彼女には話してよかったんだよ。
…………久遠」
背後からは小さくぽつりと囁く睦の声が聞こえた。