∮ファースト・ラブ∮
「なんだ?
睦、お前、誰か女性を探してるのか?
めずらしいな」
偶然出くわしたのは他でもない、女ったらしの久遠くんだ。
久遠くんは、廊下で美女たちに囲まれて笑いあっている。
くっそ、久遠!!
「お前、手鞠ちゃんがピンチかも知れない時に、
よくもまあ、これだけ呑気(のんき)にしていられるよな!!」
腹の底から怒りがふつふつとわき出て、
ついつい口に出してしまったものの、ふと、思い出してしまった。
久遠は紀美子が手鞠ちゃんに何かしようとしている事実を知らなかったりするんだった。
あっと……。
口を塞いだオレに、久遠の表情は一気に変わった。
「おい!!
手鞠ちゃんに何かあったのか?」
いつも冷静な久遠くんには考えられない光景だ。
オレの首根っこを掴んで揺さぶってくる。
「あ、いや、だから……その……」
何と言えばいいのか……。
目をおよがせてしまう。