シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「さすが、玲くん!!」


芹霞が親指立てて、朗らかに笑った。


まるで、2ヶ月前の入院生活のように、僕を信じ切っている瞳で。


歪む櫂の顔など、気づきもしない。


こんな時に――

何を喜んでいるんだ僕は。


芹霞の前で。


櫂に出来ないことを僕が出来たことが、それを櫂の前で芹霞に褒めて貰えたことが、こんなに嬉しいなんて。


もっともっと、櫂より僕を頼りにしてよ。

もっともっと、櫂より僕を求めてよ。


僕はいつだって、君の為に頑張るから。


そう――

言ってしまいたくなる。


僕は櫂の影で生きると決めているのに。

櫂を凌駕することは赦されないのに。


そんな僕の心の煩悶を遮ったのは、芹霞の声。


「…はっ!!! 玲くん、紫茉ちゃんと小猿くんも助けて!!!」


「シマちゃん…え、居たの!?」


「うん、すぐそこにいるはず…ええ!? あれ、いなくなっちゃった!!?」


そんな時、芹霞が携帯を取り出して。


「あ、紫茉ちゃんからメールだ!!!

"助けてくれたのに、翠が噛み付いて悪かった。迎えが来たから、強制的に帰ることになったが、また会いたい。謝罪を兼ねて"

紫茉ちゃんって律儀…というより、何か"会いたい"なんて…きゅんとしちゃったりして、えへ」


「何が"えへ"だ!!

全く…どうしてお前は真っ直ぐ家に帰れないんだ!!?」


櫂がコメカミに青筋をたてて、芹霞の両頬を横に引っ張った。


「どうしてお前は、警戒心がなさすぎなんだ!!?」


「いひゃい、いひゃいよ~、れいひゅん、たしゅけて~」


涙目の芹霞が手を振って、僕に助けを求めるけれど。


――きゅんとしちゃったりして。


「ふふふ、僕だって"会いたい"って何度もメールしたのにね。シマちゃんに浮気した罰だよ?」


そう芹霞の耳元で囁いて、にっこりと笑った。


僕も"シマちゃん"を見てみたかったけれど。

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