シンデレラに玻璃の星冠をⅠ



だけど――



『幻ではないぞ?

今は――逃がしてやるだけだ。


此処で殺されては、面白くない』



直接頭の中に――


酷薄めいた声だけが聞こえてくる。



『それに、お前達は俺の駒だ。


俺の仕事を放棄して、簡単に逝かせない。


馬鹿な奴らだ。さっさと仕事をしていないからこんな目に遭う』



姿なき、氷皇の声。


遠隔感応能力(テレパス)。


皆もきょろきょろしている処を見れば、此の場の全員に…一方的に発信されているのだろう。



緋狭様も出来るのなら、氷皇だって出来てもおかしくはない。



そして、何かのスイッチが突然入ったように、口調が変わる。



『誰を味方にして何処で何の力を使ってもいいけれど、エディターのことは忘れないでね~。制限された中で、追手をかわして、もがいてもがいて頑張れ~!!! 

あ、そうだ。明日の桜華は見物だよ? 今年度のミスコン結果発表だからさ!!! 時には心にゆとりも必要さ。ね、レイチャン。

ああ、忘れてた。レイチャン、請求金額の振込、領収書欲しかったらいつでも言ってね。ダミー会社の経費で落とすのオススメ。あはははは~』


今。


誰もがショックを受けて、追い詰められているのに。


あまりに突拍子もない話題と、いつものような馬鹿にした言葉と口調に。



私は――




「黙りやがれ、


この――クソ青がッッ!!!」



思わずそう怒鳴れば。



「!!!?」


皇城翠がひっくり返った。

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