シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「櫂、あそこに…人影見えないか?」


俺は目を細めた。



「……。……なあ、玲。あれさ…あの髪…」


玲も気付いたようだ。



「ああ、本当にあいつの髪の色は、夜目でも便利だよな」


「誰? 誰がいたんだい?」



「煌だ」



俺が言った。



「だとすれば…ああ、いるな」


「いるね、芹霞。大方煌に引き摺られてきたんだろうけど…まさか、煌…芹霞に不埒な真似しないだろうね?」


玲の目が剣呑な光を放つ。



「いや…あの様子では大丈夫だ」


「随分と余裕だね、櫂。本当に保健室に2人にして良かったのかよ」


また玲はぶり返してくる。


意識失った芹霞を朱貴のくれた保健室に寝かせるにあたって、煌だけを護衛に置いておくことに、玲は最後まで反対していた。


あの保健室は…朱貴の結界が張ってあり、警護団レベルなら侵入は難しい。だが玲が心配していたのは、違う方面だったみたいで。


――煌が芹霞を襲ったらどうするんだよ!!? あいつだって欲求不満なんだぞ!!?


自分もそうだと暴露しているのに、玲は珍しく気付いていないようで。


欲求不満はあったとしても、燃えた神崎家から逃げた時の煌の憔悴は激しくて。その落ち込み方は、半端じゃなかった。


煌がこういう状態になると、悪い方にと考える癖がある。


煌が8年前のことを俺に聞いてきた以上、そのことを絡みつけて思い悩むのは、確実のように思えたから…俺は煌を芹霞と2人にしたんだ。
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