シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
煌はきっと櫂の眼鏡姿を見知っていたのだろう。


煌と櫂は8年来の幼馴染。


あたしより、櫂との付き合いが4年も短い奴の方が、今の櫂をよく知っているということか。


とっても面白くない。


じゃあ煌をよく知っているのは、8年来の幼馴染の…一緒に住んでいるあたしか、飼い主である櫂の方か。


感情に素直な煌ならば、きっと誰に対しても隠すものなどないに違いない。


どちらか、なんて愚問なんだろう。


「その公式…前もやってたよね? 必死に覚える必要ないんじゃない?」

「うるせえよ、玲。お前の頭と同じにすんなよ!!」


鮮やかな橙色に、お堅い黒眼鏡。


何とも妙な組み合わせだが、それもアリだと思えてしまうのは、贔屓目なんだろうか。


昔から、煌を見れば考えるよりまず手が出てしまうけれど、あたしは煌だって大好きだ。


お互い、長所も短所も判りきっていて、今更何も隠すことなどない。


櫂とはまた違う気安さがある。


勝手にレベルが高すぎる櫂と自分を比較して、胡散臭い橙色だ何だとすぐ自分に難癖つけて卑屈になるけど、煌の美貌だって相当なものだ。


体格もいいのだから、モデル業に転身しても生きていけるだろう。


気付いていないのは、本人ばかり。


「あんなに詰め込んだ知識…勿体ないよね」

「だから、黙れってば、玲!!!」


煌はやらないだけで、やれば出来る子だ。


やる気モードになっている時は、必ず外部からの圧力があって奴自身切羽詰まった時だけれど、前回のテスト時には『-35点』などとってもへらへらして逆に皆に自慢していた程なのに、どういう心境になったのか。


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