シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
沈む。
沈む。
闇の中に。
僕を誘う…母の居る闇の中に。
10分だ。
10分で僕は帰るんだ。
芹霞の居る、光の世界に。
だから僕は――
その時、何かが囁いた。
カ エ サ ナ イ
ワ タ サ ナ イ
まるで僕の幻影の中の母のように、声は幾重にも広がり、しがらみのように執拗に僕に纏わりついてくる。
実体を伴わない声の攻撃に、僕の身体に悪寒が走る。
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
狂ったようなその声は――
――…誰のもの?
僕の中の"何か"が、同調したように、呼応したようにざわめきだす。
やばい、と感じるのに、身体が動かない…。
『玲!!! 闇の囁きに耳を貸すな。力を強める!!! しっかり気を持て!!!』
周囲の景色が…不透明な膜に覆われ、セピアの色合いを強めた。
ア イ シ テ ル
ア イ シテル
アイシテ……
同時に――…
僕から…声が薄れていく。
縛りが…消えていく…。