好きって言って!(短編)
「「…?」」

私たちはお互い訳が分からなくて顔を見合わせる。

「だって…。
前に淳也、まりえちゃんが読モやってる雑誌、こっそり買ってたじゃん!
友達だって今日、『雑誌に載ってるって教えたら、買いに走ってた』って言ってたよ」

それって、そういうことじゃないの?

淳也は、あー、もうっ!と頭を掻きむしると、

「とにかく、こっち来い!」

私を部屋の奥まで強引に引っ張って行く。

小さい本棚の中で、乱雑に置かれたバスケ関連の本に紛れるようにしてあった雑誌を引っ張り出すと、私に突き出した。

「お前が言ってんの、この雑誌のことだろ」

「そう、これ。
…まだ持ってたんだ」

私と淳也がカラダだけの関係を持つようになった、いわくつきの雑誌。

中を開くと、やっぱりまりえちゃんがイマドキの服をバッチリ着こなしてる写真が所狭しと並んでる。

「ほらー。
やっぱり、まりえちゃんじゃん」

「俺もビックリだよ。
あの子、モデルやってたんだ…。
―――じゃなくて、こっち!」

淳也はそう言って、まりえちゃんのページよりももっと後ろ、何だか開きグセが付いたページを私に見せた。

その見開きのページには、何枚もの小さなスナップ写真が散らばっていた。

なになに、『街角の着こなし上手<東京編>』?

「これが何よ?」

私はよく見もせずに淳也に視線を戻す。

「だから、ここだってば!」

淳也が苛立った様子で指差した先を読む。

なになに、『モデルみたいな体型でメンズライクなデニムを着こなす小林菜々さん(18)』

「え―――っ!?」

私は叫びながらその写真をガン見した。
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