好きって言って!(短編)
「気が抜けちゃった…」

「―――ついでに腰も抜けたって?」

淳也は私に合わせてしゃがみ込むと、片眉を下げて苦笑した。

こんなこと、前にもあったな。

和泉に無理矢理連れて行かれたサークルの飲み会のとき。

(和泉のせいで)誤解したとはいえ、駆け付けてくれた淳也。

あのとき私のために先輩を殴ってくれたのは、ただの心配だけじゃなかったんだね。

淳也は私の手から雑誌を取ると、思い出すように言った。

「俺の部屋でこの雑誌見つけたとき、お前がああやって挑発してきたもんだから、てっきり俺の気持ち分かっててからかってんだと思った」

―――教えてあげよっか、女の子のカラダ。

―――ドーテーじゃ、格好つかないもんね?

あのときのセリフを思い出しただけで顔から火が出そうになる。

だけど、それくらい。

なりふり構ってられないくらい、淳也を手放したくなかったんだ。

「からかい半分だったとしても、お前のこと抱けるなら、それでもいいやって思った。
順番はぐちゃぐちゃだけど、そのうち俺に夢中にさせてやればいいやって」

そこまで言ったと思うと、淳也は「なのに」と、大きなため息をついた。

「お前をイかせられたらちゃんと告白しようって思ってんのに、お前、全然イかねーんだもん」

「だって…!
イったって言っちゃったら、淳也との関係が終わっちゃうと思ってたんだもん」

私を気持ち良くさせられるようになるまで。
それが約束だったから。

「何それ、初耳!
お前、気持ち良くなってたの?」

私はコクンと頷く。

何度も何度も、悔しいくらい気持ち良くさせられてた。
< 19 / 21 >

この作品をシェア

pagetop