一途愛
「おめでとうございます~。」

「やだ~~もう~恥ずかしい~~。」

「いつ生まれるんですか?」

「夏の予定なのよ。」

「お仕事は?」

「自分の店だからね ぎりぎりまで頑張るわ。」

「赤ちゃん生まれたら会いたいな。」

「会ってくれる?」

伊織さんが私の手をとった。

「ごめんね。龍のこと……。」

「そんな…。龍のことは笑顔で送り出したんです。
私たちの中ではきちんと納得したことだから。」

伊織さんが私を抱きしめた。

「かわいそうに……龍も姫ちゃんのこと
すごく好きだったのに…こんなことになって……。
あの子 姫ちゃんと出会ってほんとに 変わったのよ。
今の龍を母が見たらきっと感動して
姫ちゃんをこうやって抱きしめると思うわ。」

「龍の心の中でも おかあさんのことは
大きな傷になってたから…。おかあさん喜んでくれてたら
すっごくうれしいです。
私だって龍のおかげで変われたんですよ。
感謝してます。」

「これから先もいろいろあるけど
あなたたちが結ばれること 祈ってるから。」

「そうなりたいです。ほんとは 龍を待ってるって
言いたかったけど…そう言ったら龍を苦しめてしまう
そんな気がして…言えなかった。」

「婚約者のこと・・・?」

「よくわからないけど…それもあります。」

「まだ子供なのに婚約とか
あのくそおやじの考えてることわからないもの。
ほんとアイツ死ねばいいのに。」

伊織さんが私から体を離した。
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