一途愛
「大丈夫よ。」
さすがに緊張している私に気づいて 伊織さんが笑った。

「髪型なんて気にしたこともなかったんです。
本当はおねえさんも…龍くんにこんなさえない女
いやではありませんか?」

伊織さんは鏡越しに目を丸くした。

「龍が好きなんだもん。
問題ないと思うけど?それに見た目なんて本人の
努力次第でどうでもなるわ。
大切なのはここね。」

伊織さんは胸をたたいた。

「心……?」

「そう。姫ちゃんの場合は 重症のようね。」

「龍くんにも言われました。
本当に物心ついてから他人とこんなふうに
かかわることがなかったんです。
もうそれでもいいかなって…思ってたし…。」

「そこに龍が現れたんだ。」

「だから…不安なんです。どうして私なの?とか
こんなんでいいんだろうかとか……。」

「恋は魔法なのよ。
だから…女の子をとってもきれいにしてくれる。
龍はその魔法を 姫ちゃんにかけたんだわ。
だからこうして長年貫いてきた
おかっぱを卒業する気になったんだもの。」


そうだ……。
私はもう魔法にかけられてるんだ。

「誰でも自分のために努力してくれているって
うれしいことよ。
私も弟のために姫ちゃんが
綺麗になりたいって思ってくれるのうれしいわ。」


そうか……。
私…魔法の力があるから…大丈夫なんだ…。

そう思うと勇気がわいてきた。
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