繋いだ手
「どんなコかな?明日教えてね!」



遅番で入るスタッフが、

早々と、

夕方5時前の時点で出勤している。



地方から出てきた大学生にとっては、


ここは、実家のような感覚らしい。


「腹減った」とか、

「負け三昧っス」とか、パチンコネタ、



ここでそんな会話をする日もあれば、



「りおさん、今日時間ある?」


と、
誰にも聞かれたくない

金銭の悩みや、


彼女とのこと、


将来の行く末…


あらゆるジャンルの、


相談事で、


近所のサイゼで、


お茶したりして、


あたしは、


学生のお悩み相談センターになることも


しょっちゅうだ。


今日は、早番、遅番、入れ代わりメンツみんなで、


新人くんについて、


高鳴る気持ちを分かち合っていた。



それでも



あたしにとって、


このステージが全てではない。



明日休み!


という素晴らしい一日を目前に、


あたしは、


このあとたっぷり


遊びの予定を詰め込んでいた



「ぢゃ、お先しまぁス!」



あたしは、早々に



店を出た。





今日来るこの人が、



運命の出逢いになることなど



その時は、


まだ、



知る由もなく。
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