胸の音‐大好きな人へ‐
心配なら、春佳んちまで行ってみればいいだけの話。
幸い、大学で仲良いヤツらはイザって時事情分かってくれるヤツばっかだから講義の代返も難無く頼めるんだし、新幹線で往復すれば、地元愛知とここ京都は日帰りできない距離じゃない。
でも、どうしてもそれはできなかった。
――あの日の記憶が、春佳にしがみつこうとする弱い俺をがんじがらめにしてるから。
ここであたふたしたら、今まで春佳に見せてきた俺のイメージ崩れるし……。
くだらない見栄と意味のないプライドが、春佳に会いたいという本音を心の奥にしまいこんでしまった。