胸の音‐大好きな人へ‐

中学2年の時、同じクラスの女子と数ヶ月だけ付き合ってた。

こっちから好きになったんじゃなくて、向こうから告られて付き合ったという、おいしいパターン。

だって、相手は学年1人気のある女子だったんだから。


胡桃澤藍(くるみざわ·らん)。

俺の人生初の彼女の名前。

藍は、先輩後輩問わずモテた。


かすかに潤んだ大きな瞳。

メイクも何もしてないのにツヤツヤな肌。

淡い桜色のグロスが塗られた色っぽい唇。

同級生とは思えない大人びた魅力の持ち主で、右手の指先で左耳に髪をかける姿を見る度、女の魅力ってのに無頓着だった当時の俺でもドキドキしてた。


手をつなげるくらい近くにいると、藍からはいい匂いがしてきた。

あれは何の匂いだったんだろ。

藍からは、日替わりでいろんな匂いがしてきたことを、今でもよく覚えてる。

< 19 / 74 >

この作品をシェア

pagetop