胸の音‐大好きな人へ‐

食欲と睡眠欲旺盛だったあの頃。

藍の言葉に心が砕け、1ヶ月くらい何も食べられなくなった。

おまけに寝つきの悪い日も続き、何をしてても気分はドンヨリしたままで。

愛情表現は俺の人格そのものだったりしたわけだから、それを好きな子に全否定されたことが、フラれたことよりショックだった。


真っ暗な部屋の中、カーテンを閉めきった窓には月明かりが差していて。


夜通し泣いてたことを家族に知られたくなくて、家にいる時間はずっとベッドの中で過ごした。


思考は「どっちが本当の藍だったの? 藍と付き合ったのも別れたのも、全部甘い夢だったんじゃないの?」ってとこから始まって、「ああ、最後に聞いた言葉が藍の本物の気持ちなんだ」ってトコにたどりつく。


優しくて可愛くて、みんなの心をつかむ人気者の藍。

人に嫌われるような子じゃないし、他人の悪口を人に言い触らす性格でもない。

藍をあんな風にしてしまったのは、他ならない俺。

俺のせいだ。全部。

俺が駆け引きのできない男だから。

好き好き言うのが愛情って信じて、藍の気持ちを無視してたことがあったかもしれない。

だから別れが来たんだ……。

< 25 / 74 >

この作品をシェア

pagetop