胸の音‐大好きな人へ‐
食欲と睡眠欲旺盛だったあの頃。
藍の言葉に心が砕け、1ヶ月くらい何も食べられなくなった。
おまけに寝つきの悪い日も続き、何をしてても気分はドンヨリしたままで。
愛情表現は俺の人格そのものだったりしたわけだから、それを好きな子に全否定されたことが、フラれたことよりショックだった。
真っ暗な部屋の中、カーテンを閉めきった窓には月明かりが差していて。
夜通し泣いてたことを家族に知られたくなくて、家にいる時間はずっとベッドの中で過ごした。
思考は「どっちが本当の藍だったの? 藍と付き合ったのも別れたのも、全部甘い夢だったんじゃないの?」ってとこから始まって、「ああ、最後に聞いた言葉が藍の本物の気持ちなんだ」ってトコにたどりつく。
優しくて可愛くて、みんなの心をつかむ人気者の藍。
人に嫌われるような子じゃないし、他人の悪口を人に言い触らす性格でもない。
藍をあんな風にしてしまったのは、他ならない俺。
俺のせいだ。全部。
俺が駆け引きのできない男だから。
好き好き言うのが愛情って信じて、藍の気持ちを無視してたことがあったかもしれない。
だから別れが来たんだ……。