胸の音‐大好きな人へ‐
カッコイイ男でいたいという一方で、本当に好きな子を全力で愛したいって思う。
春佳のことはあきらめた方がいいよな……。
卒業したらどうせ大学も離れ離れになるだろうし、そしたら新しい出会いもあるよ。
放課後。一人、教室の自分の席に座って頬づえをついていたら、先に友達と帰っていったはずの春佳がやってきて、
「圭君のこと、好き。
もしよかったら、付き合ってくれる?」
と、泣きそうな顔で言ってきた。
まさかの告白。期待なんてしてなかったから、嬉しい以前に戸惑うって。
なんでこのタイミングなんだよ!
あきらめようとしてたのにっ。
「バイト受かったら、告白するつもりだったんだ」
「なんでそーなんの」
喜びでゆるみそうになる頬をわざとひきしめてるから、頬筋つりそう……。
「バイトに受かれば、少しは自分に自信持てる気がして」
「……ふーん。ま、テキトーによろしく」
クラッカー鳴らして飛び上がりたいくらい嬉しいのに、冷めた返事をする俺。
コイツも、藍と同じでクールで知的なフリした俺を好きになったんだろうなって思ったら、本性なんて出せなくなった。
だったら付き合うの断ればいいのにって指摘されそうだから言っとく。
好きな子に告白されて完全無視できるほど、神経太くないんだ。