胸の音‐大好きな人へ‐
春佳宅までは、徒歩で行ってもそんなにかからない。
新幹線に乗る前から本当の意味で春佳と向き合う決意は揺るがないって自信あったのに、良く知る地元の風景を懐かしんでいくにつれて、だんだん怖くなってきた。
会えたとしても『いまさら何?』って冷たく門前払いされるかもしれない。
『距離置くなんてウソだよ。圭のこと嫌いになったって気付いてほしかったんだ』なんて言われたら、立ち直れない……。
自転車の少年が横を通り過ぎた時、一軒家の春佳の自宅の屋根が見えて、足がすくんだ。
馬鹿か!! 何立ち止まってんだよ。
ちゃんと話すって決めたんじゃねぇのかよ!!
手のひらに爪がくいこむくらい、こぶしをにぎる。
こんなに動揺している時でも、俺の視覚は目の前の出来事を把握(はあく)していた。