しゃぼん玉

メイは背後にリクの気配を感じながら、父親のことを思い出していた。

思い出したくないのに、今でもその顔や声を覚えている…………。

最もメイを愛してくれ、

最もメイを傷つけた、

実の父親…………。


“お母さんに嫌われているのは悲しい。

どうしたらお母さんに好かれるんだろう?

でも、お父さんは優しいから、メイ嬉しいよ!”

幼き日のメイはそう思っていた。

父親と一緒に眠る布団の中は、とてもあたたかくて心地よかった。

メイが風邪をひいた時、

母·翔子は、

『私にうつさないでよ!?

邪魔だからあっちいって!』

と言い、メイを放置したが、父親だけはメイの看病をしてくれた。

たとえ、仕事で帰宅が深夜になってしまった時でも……。


それだけでなく、父は、メイの面倒を見ない翔子を叱ってくれたりもした。


だが、そういう父親の言動は、メイの立場をおびやかすものにしかならず、結果的にとことん悪く作用するだけだったのだ。

翔子の嫉妬を買い、

『あんたガキのくせに、私の恋人奪わないでよ!

あんたがいるせいで、私は怒られるのよ!?』

メイは翔子に、謝ることしか出来なかった。

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