しゃぼん玉

メイはその中から、ナナセにもらった100万円入りの封筒を取り出し、ミズキの目の前に勢いよく置いた。

大きな衝撃音に、一瞬、店内の他の客達がメイを見やった。


最初メイは、この金を使おうとしたけれど、使おうとした時翔子の顔が浮かんだ。

翔子は今、仕事をせず、男に媚びて、男の金を当てにして、女を武器にして生きている。

ナナセにもらった金を使ってしまったら、自分も母親と同じ、他人に媚びしか売れない金に汚い人間になってしまいそうで怖かったのだ。

メイは、間違っても翔子みたいな女にはなりたくないと思っていた。


「金が必要になった時は、私が直接あんたから巻き上げてやるよ」

メイは冷たい視線と平坦(へいたん)な声でミズキを見た。

ミズキは泣きそうな顔になっている。

メイに言われた言葉一つ一つが、痛かった……。

“私、間違ってたのかな?

穂積さんの心は、何を求めているの?”

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