しゃぼん玉
メイの家庭環境を胸に秘めて、
「お母さんは、私とリョウを育てていて、逃げたくなったこととかある?
育児が辛かったとか……」
菜月は目を丸くした後、朗(ほが)らかに笑った。
「逃げたいなんて思わなかったわよ。
ミズキもリョウも、小さい時は目が離せなくてね。
大変な思いはたくさんしたけど、それが嬉しかったわ。
親なんて、忍耐の連続よ。
生まれた子供が可愛いからこそ、なんでも耐えられるの。
独身時代には、そんな風に思える自分を想像できなかったけどね」
「お母さんもお父さんも、その……。
育児からくるストレスとかで、虐待しようとかは思わなかった?」
複雑な表情で眉を下げるミズキに、菜月は凛々しい声でこう言った。
「ありえないわ、そんなこと」