しゃぼん玉
メグルの祖父母は食が細い。
本人達いわく「歳を取るとたくさん食べなくても大丈夫なんだよ」ということだった。
ちゃぶ台の上には、たくさんのおでんと、豚肉の生姜焼き。
メイとメグルの分だとしても、やけに多い。
「こんなに食えるかなぁ」
頭をかたむけるメグルに、祖母はあたたかい笑顔を向け、
「メグルもメイちゃんもたくさん食べなきゃダメだよ。
育ち盛りなんだから。
ささ、遠慮しないで」
メイは遠慮せずたくさん食べた。
どれもとてもおいしい。
気分的なものかもしれないが、リクの家で出される食事より格段においしかった。
いつ食料難に陥るかわからない生活をしているメイにとって、食事の時間ほど貴重なものはなかった。
生きることに何の意味も見出だせないメイだったが、こうして食べ物を口にしていると“生きたい”と叫んでいる本能に気づかざるをえない。