しゃぼん玉

星崎家の前についた二人は、おやすみの挨拶を交わした。

「また明日ね」

「うん、気をつけて」

ミズキは、来た道を戻るように遠ざかるナナセの背中を見送った。

彼の姿が見えなくなった後、ようやく合鍵で玄関の扉を開ける。

渇いた音と共に開かれる扉の奥からは、父·大成の声がした。

“お父さん……?

どうしたんだろ。

今の時間は、アパートにいるはずじゃ?”

国内でも有数の自動車部品工場で働いている大成は本社の工場勤務をしていたのだが、数年前に新設した支社への異動を命じられて以来、隣の県で単身赴任をしている。

近所の雑貨屋でパート勤務をしている母·菜月は、土日の休みに大成が住むアパートに行っているが、今日は平日だ。

大成が平日に自宅に帰ってくることは珍しい。

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