しゃぼん玉

リクは、震える手でナイフの先端とメイの穏やかな顔を見つめたが、迷わず、そのナイフを小雨でけぶる地面に落とした。

「そんなことできるわけないじゃん!

メイを殺すなんて……!」

“メイが大好きなのに……!”


メイは悲しみに顔を歪ませる。

その頬には、雨ではない水分が流れ出していた。

「なんで……?

アンタは私の気持ちわかるって言ったじゃん……。

幼なじみなんだから、私の親がどんなんだったか、一番よく知ってるでしょ?」

「知ってるよ。

でも……!

メイを殺すなんて、できないよ!!」

リクは泣き叫びながらメイの腕をつかむ。

メイも、リクの興奮に負けないくらい声を張り上げ、大きな瞳から大粒の涙をこぼした。

「私、死にたい……。

もう、生きていたくないんだよ!

でも、自分で死ぬ勇気もない。


アンタなら、この気持ちわかってくれるだろ!?」

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