恋心屋
聞かれるだろうなとおもったけれど、すんなりと答えは出てきた。


「恋心ってよくわからなくて、それを知るために」


そう、恋をするということがいったいどういうものであるのか、想像的なものではなくて、具体的な実感として持ちたかった。


別にだれかに恋がしたいだとか、彼女が欲しいだとか、そういうものではなかった。


こうした動機は、不純なのか純情なのかよくわからない。


だから冗談半分で連絡をしたのだった。


「そういうのって、ダメなんですかね、やっぱり」


ミツキさんを見つめると、さっきと同じく困った表情でいた。


「いいとおもいますよ。恋心を抱くことに不純はないですから」


そう告げると、ミツキさんは僕をじっと見つめてきた。


黒い瞳には、僕の姿が反射するかのように、一点のくもりもない。


あまりじっと見つめられるとなんだか照れてくる。


そんな目で見ないでください。


それから会話が少なくなり、ミツキさんは窓外の風景に目をやっていた。
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