△~triangle~
「ほらね、ノラ。君は本当に残酷な子だ。何も知らない。だからこそ、君は沢山の人を傷付けてしまう。でもそんな事に君は気付かない。だって君は……何も知らないんだから」
「……やめろ」
饒舌に語る蓮を止める様に明が呟くが、蓮は話す事を止めない。
「君は何も知らない。僕の事も、明の事も……そして君の事も」
蓮はそう言うと優しい笑みを浮かべて見せた。
「ねぇノラ、君のその腕、どうしてダメになったか知ってる?」
「……え?」
蓮の突然の問いに、そっと左腕に手を触れた。
あれから二人に励まされ、何とかリハビリを続けた左腕は、今では少し指を動かせる程に回復していた。
しかしバイオリンを弾くのは到底不可能で、その事実は今でも私の心を深く蝕んでいる。
……どうしてこんな事に。
そう何度、思っただろうか。
そんな事を考えながら、ただ茫然と妖しい笑みを浮かべる蓮を見つめていた。