ケンカ+理解×大好き=友情
あっちゃんは目の潤みをごまかすように笑った。
「俺ってさ、こんなんだから、ずっとまともな友達なんてできないって思ってた……。
父親もろくでなしだしさ。
家の中はいつも殺伐としてて、そんな中気を許せるのは母さんと妹だけで。
高校の時も、家のことを知ってるクラスのヤツらにいろいろ言われて、誰に対しても警戒してた。
他人なんて何も分かってくれないって思ったし。
新しい環境で一からスタートしたいと思って遠くの大学に来たけど、男は気取ったヤツばっかで、初日からダメだった。
やっぱ俺には、友達作るなんて無理かもーってあきらめててさ」
その気持ちわかるよ。
私とミサキもこの大学の生徒の雰囲気には、ついていけなかった。
「入る大学間違えたかなって悩んで、本気で他の大学への編入も考えてたんだ。
こんなままじゃ新しい自分にはなれないって焦って。
そんな時に、車校でなっちゃんとみいちゃんを見かけた……。
2人は仲良くて、キラキラしてて、うらやましかった。俺にはそんな同性の友達いないから……。
まさか2人が同じ大学の子だったなんて思わなかったけど、初めて話した時嬉しかった」
泣きそうな顔になっているあっちゃんに、私はゆっくり言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「私たちも、あっちゃんと知り合えて良かった。
あっちゃんは、もう一人じゃないよ。
私にとってミサキは大事な友達だけど、あっちゃんだって、ミサキとは比べられないくらい大切な友達なんだよ」