ケンカ+理解×大好き=友情

「なっちゃん、どうしたの!?」

業者さんを見送ったあっちゃんに「急用が出来た!」とだけ言い残し、私は音羽キャンパス東門前に向かった。

駅に向かってホームを歩いて電車に乗る。それすらもどかしい。

今日だけでいいから、好きな場所まで一瞬で移動できる魔法の力がほしい。

ユナちゃんに、一秒でも早く会いたかった。


こうしてる間にも、事態が悪くなっていくようで不安が増し続ける。


コンビニから駅まで全速力で走ったからか、背中には汗が噴き出していて気持ち悪い。

9月とはいえ、ビル群に阻まれた街の景色は空気の循環が良くなくて暑すぎる。

先月、ワンゲル部の活動で行った富士山の涼しさがすでに懐かしい。


走ってきたからか、緊張のせいなのか、待ち合わせ場所についた私の鼓動は激しく鳴っていた。

呼吸が整うと、しだいに気持ちの高ぶりも落ち着いてくる。


……少し、強引だったかな。

ユナちゃんを呼び出した時の自分を思い出し、ちょっと恥ずかしくなった。

ユナちゃん、来てくれるかな……。

あんな呼び出し方したんだもん、来ない確率の方が高いよね。


ユナちゃん……。

あっちゃんと別れたいって本気?

あっちゃんの何が不満だったの?

マナツとの別れを選ぶほど、あっちゃんのことを好きになったんじゃなかったの?


……ユナちゃんに訊(き)きたいこと全部を、口に出さずにリピートした。


ユナちゃんと距離を置く前のあっちゃんの幸せそうな顔が脳裏にうかび、胸がしめつけられる。

< 86 / 116 >

この作品をシェア

pagetop