リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「少し用心されたほうが、いいかもしれません。そんなウワサを流している子たちがいるのは、事実なんで。言葉尻を捉えて、あることないこと好き勝手に言い触らすかもしれませんから」

さばさばとした口調でそう告げる亜矢子に、肝に銘じますと明子は頷いた。

「みんなが、そんなことを言っているわけじゃありませんけど、牧野さん、人気あるから。変にやっかんでいる子もいるみたいで。そういう子たちも、陰でいろいろと言っているようです」
「ありがとうございます。教えてもらって助かりました」

モテモテマンのお蔭で、やっぱりいらぬ敵を作ったわと、落胆しかけた明子の耳に、亜矢子の毅然とした強い声が聞こえた。

「いいんです。私が嫌いなんです。そういうの」
「そういうの?」
「陰でコソコソみたいな。当たって砕ける度胸もなかったくせに、恋人ができたら、その人の悪口を言いまくるなんて。そういう人、私、大っ嫌いなんです。振り向いてもらうための努力すら、なにもしなかったくせに」

亜矢子のはっきりとした辛辣な言い様に、明子は目を瞬かせた。


(こ、こういう人だったんだ)


ゆるゆると頬が緩むのを、明子は自覚した。

「私は玉砕しましたもの。何度も。私が諦められるまで、何度でも当たって玉砕してきましたもの。こう言うのもなんですけど、容姿だけなら勝っている自信がありますよ、私。それでも負けたんですもの。だから、少しくらいは、どうして綿じゃなくてあの人なんですかって、そう悔しがらせてもらう権利あると思います。でも、なんで端から勝負もしていない人たちが、負けたと言って悔しがって、あれこれ悪口を並べたてるんですか?」

せめて、勝負してから言いなさいって話じゃありませんか?
びしゃりとそう言ってのける亜矢子に、明子の気分は高揚し楽しくなった。


(うわー。すごく好き。こういう、はっきり物言う人)
(付き合い方間違えると。きついけど。すごい好きー)


目をらんらんと輝かせながら、明子は亜矢子に友好の歩み寄りを見せた。

「おっしゃる通り。ごもっとも。文句苦情愚痴全般、言いたいことすべてを承る覚悟はありますから、今度一緒に呑みに行きましょう」
「私、強いですよ?」

むふふと笑うその顔に、美人さんはどんな顔しても美人だわーと、明子は暢気にそんなことを考えつつ、亜矢子のその顔をうっとり眺めた。


(牧野さーん。リリースしちゃったお魚さん)
(ものすごく、勿体なかったかもしれませんよ?)
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