リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「随分と、面白そうなお話しをしてるのね。私にも詳しく教えてくれる?」
カツカツと、意図的にヒールの音を鳴らして休憩所に乗り込むと、明子は腕を組んで、そこに座っていた数名の女性社員たちを冷ややかな目で睨みつけた。
「妊娠って、なんのこと?」
突然の乱入に、ばつの悪そうな表情で互いの顔を見合わせている女の子たちに、明子はもう一度、淡々と声をかけた。
「妊娠って、なんのことかな?」
自販機の前に立ち、硬貨を投入してアイスココアのボタンを押す。
いっそのこと、レモネードでも選んで、なにか酸っぱいものが飲みたくてねえと、意味ありげな大きな独り言でも言って聞かせてやろうかとも思ったけれど、こんな面倒事はさっさとケリをつけてしまいたいという気持ちのほうが、そんな悪戯を目論む性根より強かったらしい。
沸々と込み上げてくる猛々しい怒りの熱を、吐き出す息とともに外に出して、冷静にならなきゃねと、明子は自分に言い聞かせた。
缶が落ちてくる物音の紛れて、ヒソヒソと交わされている声に、明子は振り返って女の子たちをまた見据えた。
「言っておきますけど、私には妊娠しているなんて事実はありません」
「そういうウワサを、ちょっと聞いたってだけですよ。妊娠してるなんて断言してませんよ。ねえ?」
なんとなく聞いた覚えがあるように感じたその声は、総務課の女性社員のものだった。
入社して四年目か五年目くらいではなかっただろうか。
朝、牧野とのことを問い詰めてきた集団にも、その姿はあったような気がした。
その声の主は、少し冷やかすような品のない笑い混じりの声で、回りにそう声を掛けて同意を求めた。
なにをムキになってるの、バカみたい。
そんな思いが、その声には滲んでいるようだった。
カツカツと、意図的にヒールの音を鳴らして休憩所に乗り込むと、明子は腕を組んで、そこに座っていた数名の女性社員たちを冷ややかな目で睨みつけた。
「妊娠って、なんのこと?」
突然の乱入に、ばつの悪そうな表情で互いの顔を見合わせている女の子たちに、明子はもう一度、淡々と声をかけた。
「妊娠って、なんのことかな?」
自販機の前に立ち、硬貨を投入してアイスココアのボタンを押す。
いっそのこと、レモネードでも選んで、なにか酸っぱいものが飲みたくてねえと、意味ありげな大きな独り言でも言って聞かせてやろうかとも思ったけれど、こんな面倒事はさっさとケリをつけてしまいたいという気持ちのほうが、そんな悪戯を目論む性根より強かったらしい。
沸々と込み上げてくる猛々しい怒りの熱を、吐き出す息とともに外に出して、冷静にならなきゃねと、明子は自分に言い聞かせた。
缶が落ちてくる物音の紛れて、ヒソヒソと交わされている声に、明子は振り返って女の子たちをまた見据えた。
「言っておきますけど、私には妊娠しているなんて事実はありません」
「そういうウワサを、ちょっと聞いたってだけですよ。妊娠してるなんて断言してませんよ。ねえ?」
なんとなく聞いた覚えがあるように感じたその声は、総務課の女性社員のものだった。
入社して四年目か五年目くらいではなかっただろうか。
朝、牧野とのことを問い詰めてきた集団にも、その姿はあったような気がした。
その声の主は、少し冷やかすような品のない笑い混じりの声で、回りにそう声を掛けて同意を求めた。
なにをムキになってるの、バカみたい。
そんな思いが、その声には滲んでいるようだった。