リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「やめてよ。そんなことされたら、会社にいられなくなるわ」
「そんなこと、困りますっ」
「私たちだけが言ってるわけじゃないのに」
「そうですよ。私たちだって、聞いた話をしていただけなのに」
明子の言葉に、理不尽だと言わんばかりに抗議し始める女の子たちに、明子はきっぱりと言い放った。
「ふざけるじゃないわよ。そんな事実無根のウワサを流されて、被害者はこっちよ。そうでしょう。誰が言い出したかは知らないわ。でも、今、私の前でそんな話をしていたのはあなたたちです。常務は普段は穏やかな方だけど、自分の娘がそんなふうにうわさされていると知ったら、さすがに怒るでしょうね。けど、自分が言った言葉なんだから、その責任は持ちなさい。それなりにいい年した大人でしょ、あなたたちも」
そこまで一気に言うと、明子はくるりと踵を返して歩き出した。
背後から明子の名を呼ぶ声があったが、聞こえていないかのように明子は振り返らなかった。
(ウワサが、勝手に一人歩きすることは、そりゃ、よくあるけどね)
(ちょっと、悪質すぎない?)
(というか。あれじゃ、井上さんだって笑い者よね?)
(言い出したのは、お嬢様一派なんじゃないの?)
(あたしを困らせるつもりで蒔いた種が、予想外に育っちゃって、収拾つかなくなったってとこ?)
ココアが入った缶を手のひらで転がしながら、なんだかなあと、明子は肩を落とした。
(どんなつもりかは、知らないけどさ)
(自分で自分を追い詰めて、いったい、なにがしたいのかしら? 井上さんは)
困った子だなあと、思い浮かべた美咲の顔に呟いて、明子はまた気の重さが滲んだ息を、天に向かって吐き出した。
「そんなこと、困りますっ」
「私たちだけが言ってるわけじゃないのに」
「そうですよ。私たちだって、聞いた話をしていただけなのに」
明子の言葉に、理不尽だと言わんばかりに抗議し始める女の子たちに、明子はきっぱりと言い放った。
「ふざけるじゃないわよ。そんな事実無根のウワサを流されて、被害者はこっちよ。そうでしょう。誰が言い出したかは知らないわ。でも、今、私の前でそんな話をしていたのはあなたたちです。常務は普段は穏やかな方だけど、自分の娘がそんなふうにうわさされていると知ったら、さすがに怒るでしょうね。けど、自分が言った言葉なんだから、その責任は持ちなさい。それなりにいい年した大人でしょ、あなたたちも」
そこまで一気に言うと、明子はくるりと踵を返して歩き出した。
背後から明子の名を呼ぶ声があったが、聞こえていないかのように明子は振り返らなかった。
(ウワサが、勝手に一人歩きすることは、そりゃ、よくあるけどね)
(ちょっと、悪質すぎない?)
(というか。あれじゃ、井上さんだって笑い者よね?)
(言い出したのは、お嬢様一派なんじゃないの?)
(あたしを困らせるつもりで蒔いた種が、予想外に育っちゃって、収拾つかなくなったってとこ?)
ココアが入った缶を手のひらで転がしながら、なんだかなあと、明子は肩を落とした。
(どんなつもりかは、知らないけどさ)
(自分で自分を追い詰めて、いったい、なにがしたいのかしら? 井上さんは)
困った子だなあと、思い浮かべた美咲の顔に呟いて、明子はまた気の重さが滲んだ息を、天に向かって吐き出した。