リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
驚いた様子で渡辺を見る木村の視線に、渡辺は少しばかり照れ混じりのような笑みを浮かべて、鼻の頭を掻いた。

「なんか、ちょっとな。柄にもなく、木村さんチックなことをしちまったよ」

ずっと隣にいるから、なんか感化されたのかなと、笑いながらそんなことを言ってから軽い咳払いをした渡辺は、渋る岡島を説き伏せる。

「今さら見せませんって、ここで頑張ったって、しょうがないだろう。見せてくれよ」
「また、坂下に呼び出されたら、すぐに俺を呼べ」

渡辺に続けてそう言って、だから心配すんなと言い聞かせる小林に、岡島もようやく覚悟を決めたというようにキーボードを叩くと、これですと言ってディスプレイを指で指した。
小林と岡本は、岡島の背後からディスプレイを見下ろすように眺めていた。

「俺も、別のSNSに登録はしてるんだがな、イマイチ、これの使い道が判らなくて放置したままなんだ。なるほどなあ。こういう使い方があるのか」
「岡本課長、すごいですねえ。俺は、まったくやらないんですよ、こういうの」

岡本の言葉に村田がそう笑い、その傍らで、小林がなにかを指差して岡島に尋ねた。

「ここには、なにが書き込まれてるんだ? 四方山話6ってタイトルのやつ」
「このトピは、社内のこと全般、いろいろです。ウワサ話みたいなのが多いです」
「なるほど、ウワサ話な。ちょっと、見せてくれよ」

小林の指示に従うように、岡島はマウスを操作しているようだった。

「ここの番号が大きいやつほど、新しい書き込みか?」
「そうです」

ふうんと鼻を鳴らした小林は、岡島からマウスを借りると、目を皿にしてディスプレイを眺めていた。
背後にいる岡本の表情は、次第に険しくなっていった。
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