リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「お。もう、さっきの休憩所でのことが、あれこれ書いてあるぞ」
「第三は、よほど、お暇なんですかね」

やれやれと言うように、明子は首を振った。
人のことを言えた義理でないが、あの子たちはまだ仕事もしないで、あそこでやいのやいのと騒いでいるのかと、呆れるしかなかった。

「弁護士に相談なんて、簡単にできるわけないだろ、バーカ。だそうだ」
「なに言ってるんだか。相談料を払う気さえあれば、弁護士さんに相談なんて、いくらでもできるじゃないですか」
「そういうことも判らん、お子さま方なんだろうよ。岡島。オオスギさんの上司の奥さんの親兄弟は、弁護士さんだと書き込んでやれ。そういう民事訴訟に詳しいそうで、オオスギの件で話し聞いてきてやるって、今話してますよってな」
「えぇっ?! 俺が、ですか?!」
「お前しかいねえだろうよ。他に誰がいるんだよ、ここに書き込める奴」
「はい」

岡島はその通りですと観念したように項垂れると、小林に言われた通りのことを自分のアカウントを使って書き込んだ。

「けけけ。焦れ焦れ。パカ者どもめ」
「小林係長。じつはかなりのご立腹状態ですね?」
「おう。マグマがグツグツ煮立っているぞ」

腹を立てたとき特有の底意地の悪いその声に、明子はとんだ人を怒らせちゃったわねと、ウワサ話を撒き散らして楽しんでいる顔の見えないネット住民たちに、むふふと笑った。

「ただいま戻りました」

やや疲れた声で帰社の挨拶をした主は、なんの事情説明もないまま年上の同役と年上の部下に顔を貸せと言われ、そのまま問答無用で会議室へと引き立てられていった。

「課長。大変だなあ」

ご愁傷様ですと言うように会議室に向かい手を合わせる木村に、やや失笑交じりの笑いがこぼれ、皆、それぞれの仕事に戻った。
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